5人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の肉体が生み出した精子が彼女の卵子と結び付き、子を成した。ならば、遺伝子的にはその子は紛れもなく彼の子だ。今、目の前で静かな永遠の眠りについている彼の子だ。そして、これから僕が育てる事になる子でもある。むしろ、これから僕が彼女と更に子を成そうとするなら、その子供は全てが漏れなく彼の遺伝子を持って生まれる事になる。生物学的には、彼は後世にまで遺伝子を残す事に成功した。
しかし、世代を紡ぐとはそういう事ではないだろう。人は遺伝子によって形作られるものではあるが、同時に環境によって形作られるものでもある。人は人として生まれただけでは人にはならない。人として育てられるがために人は人になる。そしてその育て方は時代によって、国によって、地域によって、人によって異なるものだ。
最初のコメントを投稿しよう!