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十時さん
僕の朝は早い。
けれど、それは近所の雄鶏よりは遅い。
僕はのそのそと布団から抜け出し、手早く身支度を整えた。
ここへ来て、早くも二週間が過ぎ去った。
ここでの生活は快適で何の不自由もない。
何の悩みもないと言えばそれは嘘になってしまうけれど・・・。
少なからず、僕は謂われない暴力に怯えることはなくなった。
僕は無駄に広く長い廊下を抜けて、同じく無駄に広いキッチンへと足を踏み入れた。
はぁ・・・。
僕の小さな溜め息が無意識のうちに吐き出された。
「おはようございます。十時さん」
僕のその挨拶は十時さんの耳には届かなかったようだった。
十時さんは無心で二リットル入りの業務用アイスクリームのバニラ味を業務用冷凍庫の前で貪り続けていた。
僕はそんな十時さんの横にそっと歩み寄り、もう一度『おはようございます』と声を発してみた。
「ん? あ。おはようございます」
ようやく僕の存在に気づかれた十時さんは目だけで僕を確認された。
僕はそんな十時さんの挨拶に軽く会釈を返し、朝食の支度へと取り掛かった。
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