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そこには真っ黒な着物を着て、紫色の変わった傘を差した背の高い細身の男性がひっそりと立っていた。
その男性は一言で言うならイケメンで僕から見ても『カッコいいな』と感じられる人だった。
その男性は僕を無感情な目で見つめ、無表情のまま小さな溜め息を吐き出した。
僕は雨の降りしきる公園を目だけで見回した。
公園には僕とその男性しか居なかった。
「・・・僕なら君の願いを・・・叶えられるよ」
そう言ったその男性の声は先ほどと変わらず無感情でその言葉の意味もその言葉が本当なのかさえも僕にはわからなかった。
僕のその戸惑いを察してかその男性は呼吸のような小さな溜め息を再び口から吐き出した。
「君の出生、君の戸籍、そして、君がこの世に存在したと言う事実を僕なら消せる」
その男性の言葉に僕はただ、言葉を失った。
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