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車椅子
友達が足を骨折して入院したので、見舞いに行った。怪我以外はすこぶる元気で、部屋にいるのは退屈だから散歩をしたいと訴えられ、車椅子を借りてくることになった。
受け付けで許可をもらい、車椅子が置かれているスペースへ向かう。でもそこに目当ての品はなかった。
あまり数がないらしく、車椅子は全部貸し出されていて一台もない。いや、正確には一台だけ残っているが、そこにはすでに小柄なおじいさんが座っていて、未使用のものは皆無だ。
さてどうしようかと思案している俺の横を、トイレから戻りでもしたらしい付き添いの人に押されて、おじいさんを乗せた最後の一台が行き過ぎていく。でもそれと入れ代わるように違う車椅子が戻ってきて、俺はそれを借りて友達の所へ戻った。
気晴らしの散歩と院内ショップでの買い物をしたいと言われ、俺は友達をエスコートして店に向かった。
車椅子を押しながらのろのろと院内を移動する。と、エレベーターホールに近づいたところでホールの方から悲鳴が聞こえた。
何ごとかとホールへ走ると、エレベーター脇の階段の所で車椅子を引いた人がもがいている。
車椅子が階段から落ちかけている。瞬間的にそれを察し、俺は階段に駆け寄って車椅子の落下防止を手伝ったのだが、どうにか車椅子を安全な所まで引き戻した後、違和感に首を捻った。
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