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 思い出した。確かこの声は深月の高校で同じ剣道部にいる鷹取(たかとり)とかいう名前の奴だ。智秋が心の中でつぶやいた。  小学校の頃から剣道一筋だった深月は、そのままスポーツ推薦で今の高校に入学を決めた。  そして、今その隣に立っているだろう鷹取も、同じく推薦入学者だったはず。 「とにかく今日、由宇は俺と一緒だから帰宅も遅くなる。夕飯も外で食べてくる予定だから、そっちはそっちで適当にやってくれ。大地のことも頼んだぞ」 「……おい、ちょ…」  言いたいことだけ言って、深月は通話を切断した。 「なんだよ、おい!」  答えの返ってこない受話器に向かって智秋は声を荒らげ、次いで小さく舌打ちをする。  同時に反対側の通話口の先では、まるでその音が聞こえていたかのように、由宇が小さく肩をすくめていた。 「深月…やっぱり僕……」 「今更帰るとか言うなよ、由宇」  みなまで言わせないまま、深月は由宇の言葉を遮った。 「だいたい智秋はお前にべったりしすぎなんだ。たまには離れてもいい。というか離れろ」 「なんだなんだ、天野家の奴らはみんなしてこいつの取り合いでもしてるのか?」  深月の態度に呆れた声をあげたのは、隣にいた鷹取だった。 「まあ、確かに男にしとくにゃ惜しい美人だとは思うけどさ」  そして鷹取はそんなことを言いながらガシッと由宇の肩を抱き寄せる。 「なっ……!」  反応に困り、由宇が真っ赤になって目で深月に助けを求めると、深月はすかさず鷹取の腕から由宇を引きはがし、自分のほうへと引き寄せた。
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