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「ハァ……ハァ……」
扉を出た先は非常階段だった。
鉄の段差を壁にもたれて必死に上っていく。
「ハァ……ハァ……」
その最中、気付く。
あまりに至極単純な事だった。
今までその根本的な事に気づかなかったのが奇妙で仕方がない。
俺の名前がわからない。
当然のように風雅達と関わっていたのに、信じられないが自身の名前がわからない。
更に言えば過去の記憶がない。
学生だったはずだ。
だが自身がいたはずの学校、友人も、家族すら思い出せない。
きっと両腕を失ったショックで錯乱しているのだ。
そう考えながら見上げると、目の前に金髪の女性が立っていた。
「素晴らしい。その状態で次の戦いに挑む精神力は称賛に値するよ、相変わらずだね」
「誰だお前!殺されてぇのか!」
「私?私はヘッジホック。この哲学実験の創始者だよ」
女性は笑みを浮かべた。
「そして10276回目のクリア。おめでとう」
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