第一章 雑草にも花は咲き

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「そういうものですか……」 「まあ、この店長もね。自分が優しくされたい、 庇って欲しいと願っているタイプだったわけよ」  まあ、でもそういう性癖の一つや二つで、皆に優しくできるのならば、 それでもいいのではないのか。 「奥さんと娘が二人居ると言っていたけど、家でも女性だらけだね」  どこか日常が脆く見えて、つい永新は興味を持ってしまったらしい。 崩壊の一歩手前で、踏み止まっている気がしたという。 「手を出す事はないでしょう……俺がパンを買いにいけなくなるでしょう」 「そうなんだけどさ……」  思いは堰き止められていると、破れた時に大きくなるという。 だから、早い内に崩壊してやり直した方がいい時もあると、 永新は最もらしい事を言うが、俺は首を振った。 崩壊しないまま過ごし、徐々に溜まったものを吐き出し、 人生の最後には安らかになることを目指したい。
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