第1章

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 なるほど、とベトは合点がいく。  確かに憑かれていれば、その二つは出てくるのだろう。  帰ったら試してみようと思う。  だが二つ目に関して言えば―― 「成しえない、といえば?」 「そりゃ魔法だな」  魔法。 「魔法って……っ、く……!」  強烈な睡魔に、ベトは頭を振るう。  限界に近い。  と思った時には限界などだと、ベトは経験則から悟る。  まだまだ聞きたいことは多いのだが、オレアンに付き合って酒など飲まなければよかったか?  しかしせんせいの厚意を弾くなんて――と考え、 「……すんませんせんせい、寝ます」 「ああ、いいよ。話はまた、あとで」  最後にオレアンのニッコリ笑顔を見て、魔法ってなんだろうなと回らない頭でベトは考えようとしていた。  たとえば、アレが動かない足で立っていたこと。  たとえば、アレが窓の外に立っていたこと。  そして例の、矢が真ん中でへし折れたこと。  そのすべてが、合点がいかなかった。  なぜそんなことが、可能なのか。  もちろん間違いなくアレの仕業と断定できるものではない。  矢に関して言えば最初に思った矢による撃墜を、見えない角度で見ていない誰かが行ったものなのかもしれない。  窓の外も、実際は見間違いか梯子が立てかけられていたか窓の桟にでも足を引っ掛けていたのかもしれない。  動かないと思っていた足は、実際は騙していたのかもしれない。
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