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無言でじっと桜井の顔を見つめていたせいか、彼に「まだ寝てるのか」と呆れた声で言われてしまう。
「あ、ちょっとぼうっとしてました。すみません。さっき俺、どれぐらい寝てました?」
「ちょっとだけだよ。俺がここに来たときすでに寝てた。そっから数えて十五分ぐらい」
「十五分って。長いじゃないですか」
悠斗は、昼食を食べ終えて友人ふたりが帰ったあとも、同じ席で桜井のバイトが終わるのを待っていた。ドリンクバーでコーヒーとハーブティーを交互に飲みながら、文庫本を読んで時間を潰していた。その間にまた眠ってしまったのだ。
もう一度すみませんと呟いて、桜井から目を逸らした。だって恥ずかしい。テーブルに片肘を付き、手のひらに顎を載せて寝ていたのだ。つまり、気の抜けた寝顔を見られてしまったということだ。
起き抜けの頭はすっきりとしていた。腕時計をちらりと見ると、ちょうど十五時になるところだった。ということは――。悠斗は頭の中で睡眠の時間割表を広げた。次の眠気は十七時にやってくるだろう。今までの経験上、睡魔が襲ってくる間隔は一定で、あまりずれることがなかった。十七時までには家に戻っていないと面倒だ。そうなると、ここにいられるのもあと一時間ちょっと。
「さっきからぼうっとしてるな。――病気と関係があるのか」
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