桜井真人

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 心なしか、桜井の表情がぎこちなく揺れた。心配してくれているのだろうか。首筋がこそばゆくなる。 「ぼうっとしてるのは元からですよ」 「そうだっけ? 前はもっと、元気で――」  桜井が途中で言葉を切り、口をつぐんだ。  ――やっぱり、前の俺のほうが良いんだろうな。  悠斗は自分のテンションが徐々に下がっていくのを感じた。病気を自覚するまでは、もっと明るかった。はきはきと言いたいことを言えていた気がする。なにより、時間に拘束されることがなかった。自由だったのだ。体も心も。 「俺、ナルコレプシーっていう病気なんです。所かまわず寝ちゃったり、さっきみたいに突然脱力して体が動かなくなったり」 「ああ、さっきはびっくりした。声をあげて急にがくって倒れたから」 「初めて見る人はショックみたいですね。道端で倒れることもあるんですけど、たまに救急車を呼んじゃう人がいるんですよ」  親切な行動だとは思うが、悠斗にとっては有難迷惑なのだ。救急車が到着したときにはとっくに発作が終わっている。駆けつけてくれた救急隊員に謝ったことが二度ある。 「先輩は、どこの大学に行ってるんですか」  話題を変えたくなって、悠斗は桜井に質問することにした。彼のことなら何でも知りたいと思った。 「W大の建築学科」 「――すごいっすね」     
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