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誰もが知っている、都内の難関私立だ。
「星野は? もう進路は決まってる? それともこれから受験?」
「推薦で受かってます。十一月に」
論文と面接だけの、比較的楽な試験だった。高校の三年間、猛勉強した時期が一度もない。
「どこの大学?」
「言っても先輩には分からないと思いますよ。無名の大学だから」
「いいから言ってみろよ。俺だけ教えるのは不公平だろ」
「まあそうですね。M大の文学部です。埼玉の」
悠斗が仕方なく答えると、桜井は思っていた通りの反応を示した。ピンと来ないのだろう。一回瞬きをしてから、テーブルに置いてあったスマホを手に取った。
「あ、わざわざ調べなくていいですから」
調べられても困る。桜井の大学のレベルとは雲泥の差なのだ。もちろん泥は悠斗のほうだ。これ以上大学の話をするのも嫌になり、悠斗は違う話題を探した。
「先輩、身長伸びましたよね? 今何センチあるんですか」
「百八十二。星野は――百七十五あるかないか、だな」
「ありますよ、ぎりぎりですけど。高校の三年間で、十センチ伸びました。でももう、ここらへんで打ち止めかな」
少し残念で、悠斗はため息をついた。
「ふつうじゃん。俺が伸びすぎたんだ」
「バスケには有利ですよね、高いほうが」
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