桜井真人

7/14
前へ
/110ページ
次へ
 誰もが知っている、都内の難関私立だ。 「星野は? もう進路は決まってる? それともこれから受験?」 「推薦で受かってます。十一月に」  論文と面接だけの、比較的楽な試験だった。高校の三年間、猛勉強した時期が一度もない。 「どこの大学?」 「言っても先輩には分からないと思いますよ。無名の大学だから」 「いいから言ってみろよ。俺だけ教えるのは不公平だろ」 「まあそうですね。M大の文学部です。埼玉の」  悠斗が仕方なく答えると、桜井は思っていた通りの反応を示した。ピンと来ないのだろう。一回瞬きをしてから、テーブルに置いてあったスマホを手に取った。 「あ、わざわざ調べなくていいですから」  調べられても困る。桜井の大学のレベルとは雲泥の差なのだ。もちろん泥は悠斗のほうだ。これ以上大学の話をするのも嫌になり、悠斗は違う話題を探した。 「先輩、身長伸びましたよね? 今何センチあるんですか」 「百八十二。星野は――百七十五あるかないか、だな」 「ありますよ、ぎりぎりですけど。高校の三年間で、十センチ伸びました。でももう、ここらへんで打ち止めかな」  少し残念で、悠斗はため息をついた。 「ふつうじゃん。俺が伸びすぎたんだ」 「バスケには有利ですよね、高いほうが」     
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

868人が本棚に入れています
本棚に追加