絶縁

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 悠斗は桜井と交わした約束通り、三年に上がってすぐ、志望校をS校に変えた。それを伝えたとき、担任の先生には、目を見開かれ絶句された。両親も驚いていたが、目標を持って勉強することは良いことだと、賛成してくれた。月謝の高い進学塾にも入塾させてくれた。  引退の夏までは部活にきちんと出て、疲れた体で塾に向かい、家に帰ったあとも自室で勉強した。部活がなくなってからは、ひたすら勉強漬けの日々を送った。睡眠時間は毎日三時間を切っていた。その甲斐あって、成績は右肩上がりで伸びて行った。「さすがにS校は無理じゃないか」と笑っていた担任教師も、模試でB判定をとった悠斗に「受かる可能性は十分にある」と真面目な顔で言ってくれるようになった。  あの頃が人生のピークだったんじゃないか、と思う。S校の受験前日までが。  悠斗は重いため息をついた。ナルコレプシーの発症が、あと一日遅ければ。もしくは――  悠斗はあわてて思考を中断した。ぐだぐだ考え事をしている時間が勿体ない。それでなくても、自分には人より使える時間が少ないのだ。  二階の自室に入り、勉強机に座る。鞄から苦手な数学の教科書を取り出して広げた。 「答案用紙を集めます! 後ろの席の人、前の人に渡してください」     
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