817人が本棚に入れています
本棚に追加
/323ページ
悠斗の半ば勃起したものを、空いたほうの手でゆっくりと扱く。すると、すぐにそれは硬度を増して震えた。先端を指でくすぐると、先走りの雫が漏れた。いつもより反応が良い。
「早いな」
つい呟くと、悠斗が不貞腐れたように口を尖らせた。
「先輩不足だったから」
「自分ですればいいじゃん」
「俺、オナニーするときはふつうに女の子のこと考えるけど、いいの?」
「――それはダメ」
女の体を思い浮かべて自慰する悠斗を想像してしまい、危うく自分のものが萎えそうになった。
「嘘だよ。先輩と付き合ってからは、女の子のことなんて考えてないから」
真人の首に腕をまわして、悠斗がじっと見つめてくる。その言葉に嘘はないと感じた。
悠斗の双眸は、雄弁に物語る。真人に対する思慕、信頼、甘え――そして、見過ごしてしまいそうなほど微かな、うしろめたさ。
「先輩」
鼻にかかった、気持ちよさそうな悠斗の声。
「先輩」と呼ばれるたびに、中学のころの、忠犬のような悠斗の姿が目に浮かび、胸のあたりがくすぐったくなる。だが、若干の違和感も覚えるのだ。真人にとって、「先輩」という呼び名は、「中学時代」を思い出させるキーワードだった。良くも悪くも。
「真人って呼べよ、いい加減」
もうとっくに、先輩後輩の関係は終わっている。
「先輩、がいいよ」
「なんで」
「だって先輩は先輩だし……」
最初のコメントを投稿しよう!