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12月30日 桜井視点 R-18
シャワーを浴び終えて、真人がベッドのある部屋に入ると、毛布を被って眠る恋人の姿が目に映った。さっき「ただいま」と声をかけたときは、ベッドに寝そべって文庫本を読んでいたのに。
タオルで髪を拭きながら、真人はベッドにそっと片膝を載せ、悠斗の寝顔を見下ろした。
「ん……」
悠斗が身動ぎをし、微かな声を漏らす。薄く開いた血色の良い唇が、あまりにも無防備で可愛くて、かぶりつきたくなった。そんな衝動を、すんでのところで抑え込む。真人は苦笑した。悠斗とは三年近く付き合っているというのに、相も変わらず、彼に対して獰猛な衝動を覚えることがある。それも頻繁に。
仰向けで寝ている悠斗の手が、なにかを探すように白いシーツを掻いた。人の気配を察知したらしい。悠斗の瞼がぴくぴくと痙攣する。だが、両の目は開きそうで開かない。
起こしたら悪い――でも起きてほしい。相反する気持ちを抱えながら、真人は悠斗の隣に体を滑り込ませた。部屋の照明は消さない。まだ眠るつもりはなかった。短髪とはいえ、真人は髪をいつもドライヤーで乾かしている。自然乾燥は好きではない。
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