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12月31日 二時ぐらい 尚人視点 R-18
どすんと音がした。
何事かと思った数秒ののち、自分の体がベッドから落ちたのだと気が付いた。運が悪いことに、床はフローリングで硬かった。右腕と右足に鈍い痛みが走った。
「ってぇ……」
頭も軽くだが打った。側頭部がジンジン痺れる。腕の関節や臀部にぶつかった余韻が残っている。起き上がる気力が湧いてこない。体が熱かった。ついさっきまで情事に耽っていたせいで、血の巡りが良くなっているのかもしれない。
「冷た……」
冬の乾いた風をしみ込ませたような、冷えたフローリングが、火照った体には快い。せっかく起きたのにまた眠くなる。
尚人が床の上で、全裸のまま微睡んでいると、部屋のドアが開く音がした。
「なお?」
恋人に呼びかけられ、瞼を開けようとしたが叶わない。強い眠気に襲われる。自分の体が床に沈んでいくような感覚。
「なお、大丈夫か」
焦ったような声が、鼓膜をくすぐった。声が近い。頬に濡れた感触がした。舐められたのだ。
――なに? 犬がいる? って、そんなワケないか。
尚人が寝返りを打つと、今度は唇を割って生暖かいなにかが口に入り込んでくる。鬱陶しくて顔を左右に振ると、やっと唇を解放された。
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