第3章 親になっても愛し合いたい

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「こういう言い方をするのは、少し誤解されるかもしれないけど。 私は初めて東海林君に会った時に、どうしてここにいるのか何となく理解したつもりで彼を受け入れたんだよ。私の一存だけじゃ人事は動かせないんだけど、運は味方するようですんなりと決まってくれた時に、なかなか面白いものを見られるなって感動と期待でワクワクしたよ。六年間、とても楽しかった。 来年の春には、君は独立する。そうだろ?東海林君」 校長先生は温かい眼差しで俺を見詰めた。 「それで、君は前職のデザインの仕事に戻りたいって思ってる・・・そうだよね?」 俺はずっと驚きっぱなしで、頷くだけ・・・。 隣に座っている夏鈴は、黙って俺達の会話を見守ってくれている。 先生の奥さんが緑茶を淹れてくれて、良い香りに包まれた。 「じゃあさ。この家のリフォームを、君に依頼してみようかなって思って今日は来て貰ったんだよ。丁度いいリハビリぐらいに思って、一年時間をあげるから、私達が老後に過ごす空間を君にデザインして貰えませんか?」 「ええ!!?」 「素敵な提案、ありがとうございます!」と、夏鈴が反応した。 「家は二階建てだけど、子供もいないしね。遊びにくる孫もいない。だけど、妻の妹たちのところには続々と孫が生まれてきてね。土地も広いし、ちびっ子連れて女子会とかしたいっていうんで、リビングを広めにしつつ平屋で収納も機能性も良い家に作り替えたいんだけど・・・。無茶振りだったかな?」
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