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父さんは俺の手をぎゅっと握りしめたと思ったスゥーッと消えて行った。
「・・・言いたいことだけ言って消えた・・・」
呆然としてしまった。
はっと我に返ると、夏鈴が俺のすぐ横で倒れていた。
驚いて抱き上げると、シーツを巻きつけた途端に気絶したようだった。
温かい身体、美しい寝顔に涙の筋が余計に美しさを強調しているようだ。
リゾートホテルで体験したようへいさんの時と同じだ。
俺は、夏鈴の唇にそっとキスをした。
俺のために何度もこんな機会を与えてくれる不思議な能力に、心の底から感謝の念が沸き上がってくる。
俺の中で父さんのイメージがひっくり返った。
内に籠って思ったことを言えない男というイメージが、今はもうなくなっている。
あるのは、海のように広い心と強い家族への愛情。
波止釣りの時に父さんが言っていた言葉が蘇ってきた。
「俺が尊敬する人は俺の親父だ。父親っていうのは、家族にとって防波堤のような存在だって教えてくれたんだ。どんな大きな荒波が押し寄せてきても家族を守る。その強い気持ちが芯になれば、男は男になれるってな」
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