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「うーーん……おかわり………」
「いーかげん起きろ、美那。遅刻するぞ」
うーん、もうちょっと。
もう少しで……
はっ?
「わ、馬鹿。急に飛び起きるな!」
「浩司ごめん、また私寝過ごした?」
一気に目が覚めた!
時計、時計。
あー七時、十分前。
あ。浩司がワイシャツの上にエプロンつけてる。
えー。
今日も着ないの?クールビズのシャツ。やわらかいピンク浩司に似合うと思うんだけど。
「何俺の首見てんだよ?ほれ、目が覚めたんなら顔洗って来い。」
「はあい」
ベッドから降りようと腰掛けた途端。
ふんわりと浩司の左腕が正面から私を抱きかかえる。
「辛くないか?吐き気はないか?」
頭の後ろから浩司が優しく囁いてくれる。
何だか妊娠してから浩司がめっちゃくちゃに優しいのよね。
「うん。なんともない」
軽く腕に触れると浩司が、おつむにキスしてくれた。
ひゃん。
これ、もう大のお気に入り。
カナちゃんがはげるって嘆いていたけど、はげてもいい。もっとやってー♪
「ほら、立って」
「えー、もうちょっと」
「電車、間に合わなくなってもいいならな」
両肩をがっちりと掴まれて、はい、たっち。
ちぇっ。
「連れてってやるから。バスルームまで」
やん。うれしい。
「その代わり」
「うん、その代わり」
あ。
そんな熱い視線で私の顔覗き込まないでよ。
腰にゆるく腕が巻かれる。
はふぅ。
私妊婦さんなのに、思わず尾てい骨のあたりがぞわぞわする。
……いけないわ、旦那様。
こんな朝っぱらから、それは危険行為よ!
「餅はないからパンで我慢してくれ」
「へ?」
何、いきなりそのへの字眉は?
浩司、朝から凄まないで。
「あーん?お前が言ったんだよ、餅って」
「餅?私が?またまた~」
言うわけないじゃん、餅なんて。
うぷっ!
「あ、おい美那?大丈夫か?」
「………想像したら、ウプッ」
「わ、ほら、抱えるぞ」
きゃあ。
いきなり姫抱っこ!
びっくりしたけど。
まあこれはこれで。ムフ。
悪くないわね。
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