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店長さんはすっと立ち上がる。優しい瞳で見つめられて、心が温かくなる気がした。
「一人が寂しい時はまた相席をしよう。ここが君の家のキッチンだと思うといい」
店長さんはわたしのことを知っていたのだろうか。そう疑問に思っていると、彼は首を横に振る。
「君のことはよく知らない。いつも、前の道を一人寂しそうに歩いているのを見ていただけだ。今日の君はもっと落ち込んでいるように見えた」
昼間にいるというのもおかしかったからと、店長さんは付け加える。
「食事は楽しいものだ。君にも楽しめるひとときがあってもいいと思う。また来るといい」
見透かされたかのように、わたしに言葉をくれた店長さんはすぐにいなくなった。
あまりの優しさに涙が止まらなくて、わたしはそのまま一時間はいたかもしれない。
迷惑になる。
そう思うも涙が止まらなくて、でも咎める人もいなくて、わたしはただ幸せを感じていた。
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