千紗の結婚相手 #2

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いよいよ下川へ出発の日がやってきた。両親と千紗の三人は札幌駅から特急に乗り、名寄駅からは伯父さんの車で下川まで送って貰う事になっていた。名寄の家で少し休憩してから、いざ下川へ。何故か四人は少し緊張気味だった。千紗の縁談が決まるか人生がかかっているのだから、飲み過ぎ禁止令が出た。到着するとスナック内の大掃除となり、持参したエプロンでお祖母ちゃん二人は休ませて念入りに掃除機をかけ、名寄の伯父さんとパパと先に着いていた東京のお祖父ちゃんと先に町営の五味温泉へ向かった。夕食は温泉で軽く済ませ、男達だけで挨拶を先に済ませ、そうすると商談か接待かと知り合いに遭遇しても、そう見えるからと隼人にも話していた。和気あいあいと食事とお風呂を済ませ、深夜になるのを待っていた。スナックチワワは臨時休業にしていた。十時過ぎに車が二台スナック前に停まり、普段よりは一段と洗練された中に案内され、お祖母ちゃんは「遠路はるばるお越し下さいまして有難うございます。」とニコニコしながらも少し緊張気味だったかもしれないが、皆んなで乾杯し、自己紹介した後にはリラックスしていった。社有車運転手も来ていて温泉で待機していたのでゆっくりと家族の出会いパーティーは穏やかに楽しく進行していった。千紗の親子は控え目飲酒のはずが、隼人の父上の話が面白すぎて、つい、いつもの量になってしまっていて、何だかもう、お互い身内同士みたいな雰囲気になり、事業拡大話になると名寄の伯父さんも身を乗り出して話に聞き入った。隼人は東京の母も是非お会いしたかった事を告げて、お祖母さんやママを安心させていた。笑い声も陽気にけたたましく、臨時休業と書いた文字が読めなかった特別会員のヒグマがドアをノックしていた音に皆気付かずに盛り上がっていて、すでに真夜中どころか辺りは夜が明けようとしていた。 結局は飲み明かしてしまい、五味温泉からの運転手の御迎えの車は朝陽がサンサンと射す時間になってしまっていた。身内話やら、東京や北海道の昔話や、たわいも無い、お互い思い遣りのあるお喋りに集中してしまい、今後とも宜しくと隼人親子はホテルに戻り朝食を済ませ、温泉に浸かってから隼人の家族は去っていったが車中、隼人の父が「そう言えばチワワ居なかったね。でも久しぶりに笑ったなあ。」とポツリと呟いた後爆睡した。
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