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観笠杏奈は、珠算会が生んだ宝物でなく、期待外れの産物だったのかもしれない。
ここ昨今、20年ぐらい前から珠算業界は落ち込み始めていた。そろばんをやる子供も減り、コンピューターの発展とともに、暗算能力の必要性もなくなっていた。
そこで8年前、珠算業界やそろばんの街であり、この物語の舞台でもある兵庫県小田市はそろばんを習う子供たちを増やすため、テレビとネットで、毎年夏に開催される全国高等学校珠算大会、通称そろばん甲子園を生中継した。それにより大変盛り上がったのである。でもそれはそろばんではなく、フラッシュ暗算がである。某動画サイトでも何度も再生され、その年のチャピオンになった、兵庫県代表播磨灘高校は話題となった。特に部長でありエースだった観笠杏奈は、その可愛らしいルックスとその強さで、世の人々を魅了した。
高校卒業後は、フラッシュ暗算のプロとして、プロの世界で数々の強者たちを倒し、たった1年でチャピオンへと上り詰めた。それによりどんどんとフラッシュ暗算は盛り上がっていき、観笠杏奈もどんどんと時の人となっていた。その後、3年間チャピオンとして居続けるが、珠算の名人クラスが次々とフラッシュ暗算へと参加し始めた。このころから、彼女の連勝街道は止まり始め、チャピオンも?奪された。それから少したった頃から、彼女は試合にも姿を現さなくなり、ある日珠算連盟を脱退してどこかに消えてしまったのである。
でも、彼女のおかげで、そろばんを始める子供は増えたのである。フラッシュ暗算をやる為には、まずはそろばんを習う必要があったからだ。
数珠子もその1人である。
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