大人のきみ

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 自分を『若い』と言ってくれたのはありがたいが、『若い人はギックリ腰にならない』という情報は間違っている。というか、その想像力を他者の気持ちを思いやることに、その情報収集能力を勉強に使ってほしい。  こういうのは乗せられたほうが負けである。 「なんとでも言えー」 「じゃあ事実だって認めるんだ?」  佐々木はニタニタ顔だ。 「あーはいはい。認める認める」    男子生徒たちは「よっしゃ」とガッツポーズをした。 「そうそう。忠告しとくよ。女子の前でそんなことばっか言ってると、永久にそんなシチュエーション訪れないからな」  女子たちの中から、「きゃっ」と黄色い声が上がる。  茶化していた男子たちは一瞬にして黙りこんだ。おもしろいくらい悔しそうな顔を浮かべている。  どうだ見たか、これが大人の男っていうもんよ。西は心の中でアカンベェをした。    うるさい連中が静かになったところで、出欠確認を再開させる。 「斎間玲(さいまれい)」 「はい」  西は少し顔を上げた。佐々木や他の男子たちがふて腐れた声を上げる中、彼だけがまっすぐに返事をした。
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