『世界』

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人々の記憶の遥か昔。 神の手にあったと云われる二振りの刀剣。 一振りは黒き刀【魔剣】 一振りは白き剣【聖剣】 人々の歴史は聖魔の闘いの歴史でもあった。 【魔剣】は人の闇を取込み、【聖剣】は人の光を取込み。 世界のバランスを取る存在。 だがしかし。人間は容易くそのバランスを崩す。その脆弱な危うさ故に。 人間には欲がある。愛がある。 未来を彩るソレらは諸刃の剣。 平穏にも不穏にもなる人間の感情。 人間がこの世界に増えるとともにバランスは失われていった。そして生まれる諍い。 人々の心を闇が蝕み、溢れた闇が【魔剣】へと注がれる。 そうして、ある時__【魔物】が生まれた。 カタチも強さも様々な魔物達。ただ共通するのは『人の闇に惹かれ、闇を喰らう』事。 闇が深ければ深いほど強力な魔物を惹き付ける。多くの魔物を惹き付ける。 そして自身の心に巣食う闇を貪られる。 浄化ではない。ただ喰らわれる。 深い闇に蝕まれた心。その闇が喰らわれれば、心が、魂が喰らわれる。 人々は恐れた。自分に巣食う闇を、闇を喰らう魔物を、その魔物を生み出す魔剣を。そうして恐れという闇を抱えるのだ。 だが、人間は恐れるだけではなかった。 弱い反面、強くもあった。 欲や愛は光でもあった。 大事な人を守りたいという愛。守る為に強くなりたいという欲。 光は人々の心から祈りを通じて【聖剣】へと注がれる。 闇を晴らしたいという祈りの光は【聖剣】の浄化の力となった。 【聖剣】は【魔剣】の闇を浄化する。 神の刀は壊せない。溜まった闇を浄化し、力を失った【魔剣】は深く永い眠りにつく。全ての力を使い果たした【聖剣】もまた同じく眠りにつく。 そうして歴史は繰り返すのだ。人間が人間である限り。【聖魔の闘い】は続いていく。 「_これがこの世界」 神官長が紡ぐ、この世界の現実。まるでお伽話の様に語られた物語が世界の現実。 二人の『異界者』はどこか遠い目でそれを聞いた。
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