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「へ、あ、……だよね?」
「どうせ……忘れてるだろうって思ったから……」
まぁ、今の今まで気づかなかったのは事実なんだけど。
「いやぁ、言ってくれたら良かったのに。眼鏡とかしちゃってるし、バッチリスーツなんだもん。同級生だってわかってたらもっとサービスもしたのに、あ、ティラミス食う? 奢ってやっから」
頬を挟んでいた手で曽我部の肩をポンポンと叩くと、曽我部が頷き掛けて頭を上げた。
「あ、うん。あ! いや、ちゃんと金払うから、デザートでティラミス食いたいなって思ってたんだよ!」
「いーんだよ、いーんだよ。どうせすんげー余っちゃってんの。晩御飯でも食べきれないって思ってたんだ。処分のつもりで手伝ってよ」
なぜか曽我部はとんでもないって顔になった。
「だ、だめだって! ここはお店なんだから、ちゃんと金取らなきゃ!」
今日はこんな天気で客が来ない。だから売上に少しでも貢献したいって思ってくれてるんだな。なんて健気なやつ。
「そっか? 悪いな。じゃあ、通常料金もらうけど、タッパーに残ってるの一緒に全部食ってくれる?」
「うんうん。あ、それとホットコーヒーも。これも伝票つけてな」
オムライスセットが千二百円だし、ハンバーグ単品は千円。さらにティラミスが五百円でホットも四百円だ。
「おまえ、マジにいいやつな。もういいよ! 今日は泊まってけ! んで、明日の朝食もティラミスな。金は要らないから」
曽我部の顔が今度はスッと真顔になった。
「え……いや?」
その瞬間、パッと店が明るくなる。曽我部の耳は真っ赤になっていた。頬もうっすらピンク。
「……どうした?」
なんで耳真っ赤なんだ? ゆでダコさんみたいじゃないか。
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