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「な、なんでもないし」
真っ赤な耳を軽く握ると、曽我部は息を飲んで固まった。
「凄い赤いけど」
またパッと店が暗くなる。
「え……」
また停電かよ。なんなんだよ。と照明の方を見上げた。
「あ、えっと、店! 店、すごいよね! こんな素敵な洋食屋やってるなんて!」
曽我部は俺の手を握ると、耳から離し、話題を変えた。声が上ずってるしどうも挙動不審だ。
「うん。まぁ、ラッキーだったよ。家付きで商店街の中だし。曽我部の家もこの辺?」
さっきからゆでダコになったり、キョドったり、そういえばさっきの曽我部の口振りだとこいつは俺のこと気づいていたんだよね?
「あ、うん。えっと……就職した会社の社員寮が駅裏にあるんだよ。だから今年の三月に越してきたんだ」
「そうなんだ~。毎日来てくれてるよな?」
また曽我部の顔が真顔になった。ロウソクの炎だけで薄暗いけど耳も赤くなってる。うるんだ目がますますキラキラ光って凄く綺麗に見えた。
「お、オムライス! オムライスが、す、好きで……」
「俺の?」
曽我部は身体をユラユラ揺らし、そわそわと黒目を右へ左へ動かす。
「だから、その、わ、若狭って、お、オムライスのイメージじゃん?」
「へ?」
突然訳のわからないことを口走る曽我部。確かにオムライスは俺の好物だからよく食べてるけど、今話しているのは誰のオムライスが好きなんだ? って話なんだが。
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