夢現の狭間に見えるのは

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(……哀れだな。それを与える力が、創造と破壊を、どちらももたらすとは)  管理官は頭の片隅で、そんな感情をわきあがらせる。  そして、同時に……後ろをついてくる秘書の眼が、鋭くなったように感じられる。 (監視されているのは、久世正人だけではない。……誰もが、みなだ)  ――全てを、ナノチップとマインドコントロールにより管理された社会に、抜け道などない。  管理官ですら、例外ではない。能力と適性に関して、政府より認定を受けているが……その情け深さと疑い深さは、逆に、監視対象となっていることも知っている。 「……恐ろしい力だ」  思考を変えるように、男は、ぽつりと呟いた。 「恐ろしい? なにがです」 「――男の実績も、バタフライの力も、全て真実だ。だからこそ、恐ろしい」 「確かに。だからこそ、彼の手からその力は消えた。最善の結果ですよ」 「……なのに、わからんのだよ」 「わからない? なにがですか」 「あれが、だよ」  管理官は立ち止まり、眼下の研究室を、巨大なガラス窓から見つめる。  その先には、白衣の研究員達と、おびただしい研究機材。  そして、人一人が収められるくらいの、培養カプセルがいくつも並んでいる。  ――その中には、バタフライと呼ばれた生命体が、分析と解析を繰り返しながら、人類が望んだ姿へと形を成していく。
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