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「生きているって、呼吸しているからだろう?」
あざ笑うような彼の言葉に、管理官はたたみかける。
「……この星に忍び込むことも、今の君のような権力を持つことも、通常は不可能だ」
その言葉に、嘘はない。
人口の飽和により、管理を推し進めた人間社会は、余分なエラーを容易に見逃さない。
もし、見逃されるとすれば……まだ開拓されていない惑星か、もしくは不適合と判断されたスラム地区の者だけだ。
管理官の言葉に、正人は、眼をゆるめて呟いた。
「俺は……『ムラサキ』に、会ったからな」
「ムラサキ……?」
「夢だよ。俺の今を造り、幸福を与えてくれた……最高の恋人さ」
そこまで言って、正人は、小さく笑う。
「聞きたいと言ったな。俺がなぜ、今ここにいるのかを」
自信に満ちあふれ、どう猛な印象すら与える、たくましい目つき。
写真の中の少年とは、似ても似つかない、男らしい視線。
「聞かせてやろう。俺とムラサキで叶えた、夢の形をな」
その様子に、管理官は小さく顎を引き、言葉を待つ。
――それこそが、『バタフライ』の謎を解く、初めの一歩となるのだから。
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