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「……我々にとっても、興味深い事実だがね」
思考の枷だけではなく、宇宙帰港の網もくぐり抜け、彼は地球に戻ってきた。
そして、過去の自分を消し……政府とは異なる力を、造り上げた。
管理官が興味深いと言ったのは、嘘ではない。
だから、誘うように、その言葉を投げかける。
「――彼女の存在が、君の夢を実現させたのかね?」
管理官の言葉に、男は浮かべていた笑みを消す。
「……なぜ、あんなことをしたのだ?」
「なぜ、そんなことに興味がある」
「それは、あるだろう」
管理官は、一瞬言葉をためてから、こうして話しかけている理由を告げた。
「未知の生命体を、宇宙から連れ帰りながら、我々から秘匿し続けた。なのに、危険を冒して手に入れたはずのものを……君は、捨て去った。その理由に興味を持っても、おかしくはあるまい」
――久世正人は、つい先日、身柄を拘束された。
――自室で、長年を過ごしたと想われる女を、射殺したために。
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