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そのまま、俺は家まで帰って、鍵のスペアを作って貰って。
普通にいつもみたいに働いている。
まぁ顔に出てないか少し心配になるくらいには浮かれている。
はぁっ、と小さな溜息をつくと、
「お、なんかいいことあった?」
笹川さんがニヤニヤしながら寄ってきた。
「いえ、別に。」
「いや、絶対あったっしょ。こないだまではなんか思い詰めてた感じだったけど。今日は違うみたいだし?」
「俺もそう見える!・・・もしかして、矢掛さんの付き合ってる人って、、」
森まで乱入してきて、話がややこしくなる。
「は?違うっつーの。・・・な、なんでもないんで。」
二人はニヤニヤしながらこっちを見て何か話しているようだったけど、とりあえす詮索されずに済んだ。
「ありがとうございました。」
患者さんに、薬を渡して各々休憩に入る。
コンビニで買ってきたサンドイッチを休憩室で黙々と食べていると、
スマホが震えた。
《リン、お疲れ。朝はバタバタしたよな、仕事間に合ったか?》
なんかこぅ今朝の事もあって、読んでるだけなのにめちゃくちゃ恥ずかしい。
《昨日は突然泊めてくれてありがと。鍵も作ったから。
仕事も間に合った。》
気の利いた文というのがよくわからないので、いつもの感じで返信した。
《よかった。
また夜メッセージ送る。》
《了解。》
普通の内容なのに、なんだか今朝の甘い空気がのこっているようで、くすぐったい気分だ。
「へぇ、リンちゃんのそんな顔初めて見たぁ。」
背後からサキちゃんの声がして、食べていたサンドイッチを吹き出しそうになる。
「・・・上手く、いったみたいだね。」
「な、何が。」
女の勘は鋭いというけれど、サキちゃんは人一倍そうなんじゃないかと思う。
「私、リンちゃんが石飛くんの事、きになってんのかなぁって、チョット気付いてたんだよね。」
シノの話をすることも多かった。ミナトとの事も、そんなに多くは話してない筈だ。
「え、・・・そうなの?」
サンドイッチの残った一切れを摘まんで、囓りながらサキちゃんは呆れた顔で俺を見た。
「あのねー、何年の付き合いになると思ってんの?
確かに四ノ宮くんの事は好きだったのは分かってたけど、石飛くんの事話すリンちゃんの顔が、なんか楽しそうだったから。」
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