第十章 解放

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暫くして、司会進行を勤めるホテルの職員が、ミナトに話しかけてきた。 「そろそろ準備お願いします」 新婦側の余興が始まり、俺達も、スタンバイした。 といっても、映像を流しながらこれまでのことを振り返るようなDVDをBGMに乗せて流す感じになるのだけれど。 新婦側の方はダンスつきで歌を歌って盛り上がって、最後はお幸せにっ!!と賑やかに幕を閉じた。 「素敵な歌とダンスでしたね。 それでは続いて、新郎側のご友人がこれまでの事を振り返るようなDVDを作成されたようなので、皆様、正面にあるスクリーンをご覧下さい。」 大きなスクリーンが上から降りてきて、音楽が流れ始める。 映し出されたのは、小学校の頃の、俺とシノ。 二人で砂場で遊んだり、ゲームをしたり。 母さんの写っている写真や、シノのおばさんが写っている写真もあった。 中学、高校と少しずつ大人になる俺達。 俺は無表情だと言われてきていたけれど、シノと一緒に居るときは、笑えているように思う。 大学になって、二人だった写真が四人になる。 いつのまに撮ったんだ、というような大学の中庭で仰向けに寝転がっている俺達、誰かの家で飲み会をしている俺達、どれも楽しそうだった。 ・・・打合せしてる時も、全部を見たわけじゃないから、凄く俺にとっても新鮮だった。 最後の一枚は、いつかの飲みの後、夜景を見に訪れた丘で撮られたものだった。 俺と、シノが夜景を見ているのを後ろから撮ったもの。 顔も見えないのに、夜景の光が優しく二人を包んで、なんだか語り合っているような雰囲気に見える。 《最後の一枚が出たら、リンがスピーチ始めて。》 ミナトとサクにそう言われていたので、マイクの前に立って、書いてきた手紙を広げる。 「僕は香坂 臨也といいます。先程写真でも登場していましたが、四ノ宮くんとは小さい頃からよく一緒にいました。 と言っても、僕は人間関係を築くのがあまり得意では無く、四ノ宮くんのことは最初は苦手でした。 母は僕に友達がいなかったことを気にしていたので、四ノ宮くんの誘いは断りにくくて一緒に遊んでいる内に仲良くなりました。」 周りから少し笑いが起きた。 ・・・心臓がドキドキして。 自分の書いた字が追えなくなってくる。 不思議と、自分の言葉で伝えれるような気がした。
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