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俺は、そっと手紙を閉じた。
「四ノ宮くん、いや・・・シノは、人気者です。
いつでも人の注目を集めるし、優しすぎるくらいです。
大学時代、写真でも出てきましたが、ミナト、サクともシノの紹介で仲良くなって、毎日が凄く楽しかった。
そんな矢先、俺は母を亡くしました。
俺は、冷たくなった母を見ても、涙も出ませんでした。触れることさえ出来ずに、通夜も、葬式も、実感出来ないまま、泣けませんでした。
・・・そんな時、シノが待っていてくれて。
なんだかとても、安心して泣いてしまったのを覚えてます。
何気ない行動だけど、シノに救われている人は沢山います。
俺もその一人です。
きっと新しい家庭を築いても、大切にそこにあるものを守っていってくれると思います。
《当たり前にある幸せなんて無い。
どんな状況でも、大切な人を守る覚悟をしておくこと。
幸せは一人では感じることが出来ないから。
だから大切な人が出来た時、その人も自分を大切だと言ってくれたら、それはこの上なく幸せな事だね。》
これは亡くなった母に言われた言葉です。
受け売りになりますが、シノの友人として。
この言葉をお二人に贈ります。
本日はおめでとうございます。」
スピーチが終わる頃には周りの目は気にならなくなっていて。
シノを見ると、優しい顔で笑って頷いた。
「・・リン、お前スゲーわ。」
サクが感心したように頷く。
「いや、ホント書いてきたのに、字が緊張で終えなくなっちゃって。」
慌てて言うと、
「・・・ううん。凄く良かった。」
ミナトは少し微妙そうな顔で微笑んだ。
・・・やっぱり、なんか変な事いったりしたかな。
「・・・あ、ありがと。」
俺たちはDVDと、手紙をシノに渡して、席に戻った。
・・・とりあえず、自分の役目は果たした、かな。
談笑の時間になり、シノが俺達のテーブルまで来てくれる。
「今日はありがと。っつーか、リンの手紙良かったからうっかり泣きそうになった。」
「それはそれで見たかったな-。」
サクがはやし立てて、二人とも大笑いしている。
・・・まぁみんなお酒も結構飲んでるもんな。
だけど、ミナトだけは浮かない顔をしていた。
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