第十章 解放

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俺は、そっと手紙を閉じた。 「四ノ宮くん、いや・・・シノは、人気者です。 いつでも人の注目を集めるし、優しすぎるくらいです。 大学時代、写真でも出てきましたが、ミナト、サクともシノの紹介で仲良くなって、毎日が凄く楽しかった。 そんな矢先、俺は母を亡くしました。 俺は、冷たくなった母を見ても、涙も出ませんでした。触れることさえ出来ずに、通夜も、葬式も、実感出来ないまま、泣けませんでした。 ・・・そんな時、シノが待っていてくれて。 なんだかとても、安心して泣いてしまったのを覚えてます。 何気ない行動だけど、シノに救われている人は沢山います。 俺もその一人です。 きっと新しい家庭を築いても、大切にそこにあるものを守っていってくれると思います。 《当たり前にある幸せなんて無い。 どんな状況でも、大切な人を守る覚悟をしておくこと。 幸せは一人では感じることが出来ないから。 だから大切な人が出来た時、その人も自分を大切だと言ってくれたら、それはこの上なく幸せな事だね。》 これは亡くなった母に言われた言葉です。 受け売りになりますが、シノの友人として。 この言葉をお二人に贈ります。 本日はおめでとうございます。」 スピーチが終わる頃には周りの目は気にならなくなっていて。   シノを見ると、優しい顔で笑って頷いた。 「・・リン、お前スゲーわ。」 サクが感心したように頷く。 「いや、ホント書いてきたのに、字が緊張で終えなくなっちゃって。」 慌てて言うと、  「・・・ううん。凄く良かった。」 ミナトは少し微妙そうな顔で微笑んだ。 ・・・やっぱり、なんか変な事いったりしたかな。 「・・・あ、ありがと。」 俺たちはDVDと、手紙をシノに渡して、席に戻った。 ・・・とりあえず、自分の役目は果たした、かな。 談笑の時間になり、シノが俺達のテーブルまで来てくれる。 「今日はありがと。っつーか、リンの手紙良かったからうっかり泣きそうになった。」 「それはそれで見たかったな-。」 サクがはやし立てて、二人とも大笑いしている。 ・・・まぁみんなお酒も結構飲んでるもんな。 だけど、ミナトだけは浮かない顔をしていた。
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