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それから華やかな披露宴は終わり、二次会会場で、飲みながらじっくり話した。
宴は終わって、サクはいそいそと家族の待つ家に帰っていった。
「俺達も帰るか。」
先に歩き出す、ミナトの頭上に大きな月が出ていて。
月明かりで街灯とは違う明るさを感じる。
「うん。」
追いついて、横に並ぶと、ミナトは俺をチラッとみた。
「・・・どうかした?」
途中から感じた違和感。
何か思うことがあるかのように考え込んでいるのが気になった。
「・・・ん?なにが?」
なんでもないよ、というように笑顔を向ける。
真夜中も近いのに、まだ行き交う人がチラホラいて。
問いただす訳にもいかず、それならいいけど、と話は終わってしまった。
ふと通りすぎる足音が俺の背後で止まった。
「・・・あれ、香坂、くん?」
振り返ると、景さんがいて。
少し前を蒼井先生が歩いていた。
「・・・え、あ、こんばんわ。」
「こんばんわ。・・・えっと、結婚式だったのかな?」
手に持っている荷物と俺の服装で、結婚式だったことはお見通しのようだ。
「・・・はい。友人の結婚式でした。先生方は、」
「友人か。」
蒼井先生が話に割って入る。
ミナトをチラッとみて、少し笑ったように見えた。
「へぇ、確か、石飛さんでしたか。学会の時にお会いしましたね。」
「・・・あ、あぁ、どうも。覚えて頂いて光栄です。」
二人ともにっこり笑っているけどどす黒いものを感じた。
「・・・じゃあ、結婚式っていうのは、あの彼の式だったのか。」
相変わらず先生は鋭い。
だけど、俺の心はもう、シノの事は整理がついているから。
「はい。すごくイイ式でしたよ。」
俺の反応をみて、先生は笑った。
景さんが俺に近づいて耳打ちをした。
すっと離れて、最初に会った時みたいな、優しい笑顔で笑ってくれた。
「香坂くん、またゆっくり話そう。
ありがとう。ほら、聡悟行こう。」
歩き出した二人はあっという間に見えなくなった。
《香坂くん、俺、聡悟と上手くいってる。
先のことはどうなるかわからないけど、香坂くんも後ろの彼と・・・。
彼、なんか誤解してるかもだから、ちゃんと仲直りしてね。》
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