ボタンの行方

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来た。 柔らかな絨毯を見下ろしながら そう思った。 温人さんに妻だと 紹介されてから マダムが私に対し 彼の話題をふることはなかった。 あくまでコンシェルジュの私に たくさんの注文を つけていただけだった。 やっぱりマダムは そうすることで 私の人となりを ずっと観察していたのか。 私の粗を 探していたのか。 『仕事が特別出来るわけじゃない。 センスも人並み。 ああ、もしかして 良い家柄のお嬢さまなのかしら?』 小ばかにされているのを 冷静に受け止めながら 私はゆっくりと顔を上げた。
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