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私なら、と
マダムはショールを巻いた
自身の胸元に手を当てる。
『私ならハルトに
多くを与えられるわ。
お金も、地位も、名声も。
彼が望むすべてを
私は彼にいくらでもあげる』
そう言い切るマダムは
自信に満ち溢れていた。
何もかもを持っている。
生まれついた瞬間から
神に愛され
さぞかし満たされた
まるで不自由のない
恵まれた人生を
彼女は送ってきただろう。
挫折することも
諦めることも
逃げることも
彼女はしたことが
ないにちがいない。
オリヴィア・ロッド。
いや、
エヴァ・クロフォード。
なぜ偽名を使っているのかは
温人さんは言わなかったけれど
エヴァというのが
マダムの本当の名前だった。
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