ボタンの行方

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『ハルトにはもっと 彼の力になれる パートナーが必要だわ。 彼はもっと、 いまよりもっと大きくなれる。 私なら彼の未来を いくらでも輝かせることが出来る』 だから、お前は不要だ。 そう言われているのは よくわかった。 それでも言い返す言葉を 見つけられず 黙りこくる私を マダムは呆れを通り越し 痛まし気に見つめてきた。 同情されているのか、私は。 可哀想な女だと そう思われているのか。 むせかえるような バラの香りに包まれて 眩暈と吐き気が私を襲う。 『……結婚なんて どうしてみんなしたがるのかしらね』 マダムのそんな呟きが 遠くに聞こえた気がしたけれど、 やっぱり私は 何も返すことができなかった。
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