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「だめだ。働き過ぎだ。
休みはきちんと
とってもらわないと困る」
「休みはあらためて申請します。
突然早退するのは
他のスタッフの迷惑になりますから」
「奈々緒」
「小泉、です。
失礼します」
優しい手が伸びてくる前に
私は一歩引いてから
温人さんの横をすり抜けた。
甘えてはいけない。
彼の優しさに
寄りかかってはいけない。
私はもらってばかりだ。
何も返せないくせに
当然のように
温人さんの優しさを享受して。
返したい。
もらった分、それ以上の何かを。
対等でいたい。
庇護されるばかりの
何もできない妻になんてなりたくない。
何が出来るだろう。
何があるだろう。
私が温人さんに
あげられるものは……。
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