ボタンの行方

37/40

292人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「小泉くん」 不意に肩に手を置かれ びくりと身体が強張った。 気まずげに もしくは気遣わし気に チーフが私を見降ろしていた。 「帰って休みなさい」 「……いえ、やっぱり」 「上遠野GMの指示だ」 温人さんの? どういう意味かと目線で問えば チーフは小さなため息をつく。 「もし君がこのまま 残業を続けるようなら 多少強引にでも止めて すぐに家に帰すようにと」 「私に、家に帰れと……」 私だけ。 あの部屋に、私ひとりで。 あの美しい人と 彼が過ごしている夜を たったひとりきりで 待てというの。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

292人が本棚に入れています
本棚に追加