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「小泉くん」
不意に肩に手を置かれ
びくりと身体が強張った。
気まずげに
もしくは気遣わし気に
チーフが私を見降ろしていた。
「帰って休みなさい」
「……いえ、やっぱり」
「上遠野GMの指示だ」
温人さんの?
どういう意味かと目線で問えば
チーフは小さなため息をつく。
「もし君がこのまま
残業を続けるようなら
多少強引にでも止めて
すぐに家に帰すようにと」
「私に、家に帰れと……」
私だけ。
あの部屋に、私ひとりで。
あの美しい人と
彼が過ごしている夜を
たったひとりきりで
待てというの。
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