ボタンの行方

38/40

292人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「とても心配されていたよ。 私もすぐに君に休みをやれなくて 申し訳なかった。 ……ゆっくり休みなさい」 上司というよりも まるで父親のように 聞き分けのない 娘に言い聞かせるような チーフの言葉に 私は黙って頭を下げて その場を後にした。 それからどうやって帰ったのか、 気付いたらマンションで シャワーを浴びていた。 自分の髪からしたたるお湯の 流れをじっと見つめながら 叫び出したくなる衝動を抑えて。 食欲もなく、 倒れるようにベッドに沈む。 いつもは温人さんの寝室の 大きなベッドの上で眠るけれど。 今日は迷うことなく あまり使わない 自分の部屋のシングルベッドを選んだ。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

292人が本棚に入れています
本棚に追加