ボタンの行方

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そっと目を開けると 部屋には再び暗闇が訪れていた。 微かな甘い香りを 敏感に嗅ぎとってしまい これを彼が 私たちの家に 持ち帰ってきた事実に 心を打ち砕かれる。 この香りが すべての答えだと思った。 もう何も これ以上何も 彼に余計なことを 聞く必要はない。 あとは私が 自分で決めることだ。 起きていることに 気付かなかったのなら 私の頬に残る 涙の跡にもきっと 気付かなかっただろう。 いつだって 私がつらい時に 必ず差し伸べてくれていた 優しい手が いまはひどく遠い。 温人さんと結婚してはじめて  ”さみしい” と感じる夜だった。
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