ボタンの行方

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けれどそんな私の考えを 温人さんは正しく読み取ったんだろう。 ふたりで住む マンションのソファーに ぐったりと身を沈めた私に 温人さんは跪き、そっと私の手をとった。 そして左手薬指に飾られた そろいの指輪に 愛を誓うように口づけた。 まるで中世の騎士にかしずかれる お姫様にでもなったような気持ちで 私は黙って 温人さんを見つめた。 「奈々緒より大切なものはない。 それを忘れないで」 「お客様よりも?」 「当たり前だ。 奈々緒がいちばん、大切だ」 くだらないやり取りだった。 公私混同もはなはだしい。 それでも、嬉しかった。 だからこそ、負けたくなかったのだ。
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