自警団

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自警団

 来客が来たのは、昼食をとっているときだった。  今日の昼食は羊肉のロースト。それに大好きなベイクドポテトだ。  うちのコックは実に良い仕事をしてくれる。 「失礼いたします」  マデューロが私の傍に静かに立った。 「どうした」  昼食は静かに取りたいとマデューロには常々伝えている。  にも拘らず、声をかけてくるという事は緊急事態に違いない。  彼の行為を無碍には出来ない。私は持っていたナイフとフォークを置き、マデューロに話の続きを促した。 「自警団の者が二人、押しかけて来ております」 「ほう。昼食時にか?」 「止めたのですが申し訳ありません。どうしてもと、腰の剣を抜きかねぬ勢いだったもので」 「ふむ、用件は何だ?」 「どうやら、出回っているクスリの事の様です」 「なるほどな。相変わらず自警団というのは早合点が好きだな」 「私の方から説明しようとしたのですが……」 「ははは、彼らが聞く耳などもつものか。分かった。私が行こう」 「申し訳ありません」 「構わんよ。もう少し待つように言っておいてくれ」 「畏まりました」  一礼してからマデューロは去っていった。彼には気苦労をかけてばかりだ。それでも文句の一つも言わないのだから、ありがたいことだ。それにしても自警団の連中め。昼食時を狙ってくるとは嫌がらせが上手だ。私としては仲良くしておきたいから、門前払いにもできないし。まあ、カラカスファミリーの事を伝えておくとするかな。  
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