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誰だって金儲けは好きだ。そして金儲けのできる手段ってのはまあ限られてくる。百万人が百万通りの仕事をすれば争いは起こらないが、実際百万通りも無いわけで。業種の被る部分では当然競争をせねばならない。何しろ負ければ金が稼げないわけだから、これはもう仕方のない事だ。
私が気にかけるのは、彼らが街にとって良い存在であるかどうかという一点にかかっている。だから私はマデューロに尋ねた。
「どんな連中だ?」
「どうやらクスリを扱っている様です……」
「クスリ?」
「随分と依存性が高い様です。初めは安値でバラまき、クスリ無しではいられぬようになった連中には高値で売りつけるとか」
私は胸を痛めた。そのような悪質なものが出回っているのに気づかなかったとは。街の人々に申し訳が立たない。
「誰の管轄だ?」
「リックです」
「貧民街の方か……」
「生活の苦しみから逃れられるという事で、広まりつつあるようです」
私も貧民街の人々の暮らしについては頭を悩ませていたところだ。どうすればああいう人々を無くすことができるのか。結論はまだ出ていないが、少なくともクスリというのは解決策でも何でもないと断言できる。
「先に地獄が待っているとしても……か」
「目先の快楽に、なかなか勝てぬようでして」
「だからと言って、クスリを流させてしまったのは失態だな」
「仰る通りかと……」
「呼べ」
「はっ」
マデューロは一礼し、食堂を出て行った。
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