第1章 舞宇道村(ぶうどうむら)

1/15
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ

第1章 舞宇道村(ぶうどうむら)

春のうららかな日、奏矢(そうや) ジュリはここ、舞宇道村(ぶうどうむら)に訪れた。運転席から、ここまで運転してくれた依頼者である、浦河 智也(うらかわ ともや)が降りる。 「奏矢さん、着きました。ここが俺の家です。」 浦河は目の前の一軒家を指差す。2階建ての一般的な建物である。 「……」 ジュリはそのショートカットの黒髪をかきあげると、助手席から降り立つ。 「妻を……リオをお願いします……」 ジュリは無言でその碧眼を浦河に向けると、手に持った大型チェーンソーの燃料を確認する。 「リオ……無事で居てくれよ……」 浦河は猟銃を車から下ろすと、構えながら自身の家のドアを開ける。そのドアは大きく割られ、もはやドアの体(てい)を成していなかった。    一歩中に入ると、そこには玄関から大量の泥まみれの足跡が室内に続いていた。 「リオー!」  玄関から大きな声で、自身の妻へ声を掛ける。 返事は、ない。しかし、その声に反応してか、居間の方から飛び出してくる、男が1人。 「うっ……」     
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!