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第1章 舞宇道村(ぶうどうむら)
春のうららかな日、奏矢 ジュリはここ、舞宇道村に訪れた。運転席から、ここまで運転してくれた依頼者である、浦河 智也が降りる。
「奏矢さん、着きました。ここが俺の家です。」
浦河は目の前の一軒家を指差す。2階建ての一般的な建物である。
「……」
ジュリはそのショートカットの黒髪をかきあげると、助手席から降り立つ。
「妻を……リオをお願いします……」
ジュリは無言でその碧眼を浦河に向けると、手に持った大型チェーンソーの燃料を確認する。
「リオ……無事で居てくれよ……」
浦河は猟銃を車から下ろすと、構えながら自身の家のドアを開ける。そのドアは大きく割られ、もはやドアの体(てい)を成していなかった。
一歩中に入ると、そこには玄関から大量の泥まみれの足跡が室内に続いていた。
「リオー!」
玄関から大きな声で、自身の妻へ声を掛ける。
返事は、ない。しかし、その声に反応してか、居間の方から飛び出してくる、男が1人。
「うっ……」
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