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午後二時。すでに暇だ。
金太が帰って来るまですることがない。ペットボトル飲料を片手に外へ出る。
商店街の色とりどりの看板を見上げ歩く。向かう先は「鳩屋古書店」だ。この間の撮影の騒ぎの中、ここの若店長と仲良くなった。
みんなから鳩さんと呼ばれるこの人はおそらく金太と同年代だと思われる。しかし、共通するのは年代くらいか。金太とは真逆の落ち着きっぷりで一日中レジ横で読書をしている。まるで置物のように動かないその姿が誰かに似ている。誰だっけ、誰だっけ……と考えて思い当たったのが地元の同級生、桃太郎だった。
桃太も金太の弟とは思えない落ち着きっぷりで、共に過ごす時間はとても居心地が良かった。一日中ゲームに励んでいた背中が鳩さんと重なる。
元々本の虫だった俺にとって鳩屋はすぐにお気に入りの場所となった。休日は入り浸って鳩さんの横でひたすら文字を追うのが定番になりつつある。
「鳩さんこんにちはー」
「あぁ、連太郎休みか」
「うん。パソコン見してー」
「またかよ」
ゆるい挨拶を交わして入店する。平日なだけあって客も数名しかいない。古本の心地よい匂いに包まれて、レジ横に置いてある鳩さんのパソコンを我が物顔でいじり出す。
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