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自分で洗える、と金太を風呂場から追い出し、布団に潜る頃にはすでに日付が変わるような時間になっていた。
「連ちゃんダメだよ。髪乾かさないと」
自分の体力の無さを実感する。もっと激務でもそつなくこなす人もいるだろうに。例えば目の前でドライヤーを振り回しているコイツとか。
「お前さぁ」
「うん?」
「疲れねぇの?」
「うん?」
「ただでさえ教職なんてストレスしか無いだろうに、一時間もかけて通勤して、帰って来たら俺の世話焼いて……」
俺なんかよりずっと負担が大きいはずだ。それなのにコイツはなんてことないようにヘラリと笑う。
「俺は連ちゃんが元気でいてくれるなら全然平気」
ドライヤーの熱風が冷風に切り替えられる。大きな手でパサパサと髪を撫でられ思わず目を瞑る。
「連ちゃんにキスできる距離にいられれば十分幸せ」
ふふふと笑いながらおでこに頬に唇に、押し当てられる金太の体温。何かの儀式のようなこのスキンシップに抵抗しなくなってどれくらいたつだろう。
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