テレビが来る

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「連ちゃぁあん!助けて!」 商店街を歩いて五分。修行先である「熊野美容室」に出勤してすぐ、お隣の肉屋のおばちゃんが飛び込んできた。 「あれ?宮田さん、どうしたんですか?」 朝の緩い空気を味わいながら掃除をしようと思っていた俺は慌ててモップを棚に戻した。 「助けて連ちゃん!前髪がうまく纏まらないのよ!」 「へっ?」 「お願い、何とかして!早くしないとテレビが来ちゃう」 「あー、そういえば今日でしたね」 答えながら道具を揃えておばちゃんに向かい合う。 自分でどうにか纏めようと努力はしたんだろう。前髪がクッチャクチャになっている。笑っちゃいけないけれどなんかかわいくてニヤニヤしてしまう。 「急いで連ちゃんっ。10時にはイソフラボンがー!」 「まだ二時間ありますよ。落ち着いて宮田さん」 「はぁー、ダメだ私もう緊張しちゃって!あー、うまくしゃべれるかしらー、ああ……、コロッケいくつ用意すればいいんだろう……」
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