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「一番?」
「うん、鳩さん今までいっぱい本読んできたわけだろ?その中で、一番好きなやつ」
鳩さんが選ぶ一番はきっととても素敵な本だ。上を向いて固まってしまった鳩さんを前にワクワクしながら待つ。
「一番ねぇ……。ジャンルによって色々オススメはあるけど、映画化したやつとかがいい?」
「違う、そういうんじゃなくて、なんつーか、売れたやつとかオススメとかじゃなくて。鳩さんの中で一番のやつ」
「俺の?」
「うん。鳩さんの一番好きなやつ」
そう伝えて鳩さんの回答を待つ。考えこんでいた鳩さんの視線がふと戻ってきた。
「俺の好きなやつ……。うん、連太郎もう一回店寄ってく?たぶん在庫あるから」
「いいの?じゃあ俺それはちゃんと買ってく」
「いつも立ち読みどころか座り読みだもんな」
「貧乏なんです、すみません」
行きますか、と立ち上がりザックリ割り勘して店を出る。
少しだけ濃くなった夜の匂いを感じながら来た道を引き返す。
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