第三章 Sweet Perfume

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「真奈美ちゃんと持ってて!」 「りょーかい! 「ほら、引っ張るよ!」 「ゆかり、私が抑えてるから大丈夫だよ」 「サンキュー、圭織。せーので行くよ!」 駐輪場で友達の自転車のタイヤを抑えている彼女の肌はとても透き通っていて白過ぎた。そのため肩にかかる真っ直ぐな黒髪がよく映える。原田圭織のストーカーを始めて一ヶ月、久々に彼女の声を僕は聴いていた。ちなみに今回は職員駐車場の影から彼女を見ている。この時間、他の先生は自作したテストの見直しに行っているためここでなら誰からもバレないだろう。一度草陰にカメラを持っていた姿を高橋先生に見られたことがあったが、その時は草木の研究に写真を撮ったと言って誤魔化せた。今、目の前で起きている事を見て彼女と彼女の友達を助けてあげたい気もするが、行って誰?となるのは目に見えているので絶対に行かない。どうやら彼女の友達、橋下真奈美の自転車のペダルが隣の自転車の車輪に引っかかってしまったようだ。非力な女子高生が三人、頑張っている。 「もー、誰よこのチャリ!」 「高坂じゃね?ほら、」 「あの眼鏡か!てか、圭織、手真っ黒!平気?」 「うん、大丈夫だよ」 「よし、じゃあもう一踏ん張りするか!」 地面に両膝を着いてタイヤを引っ張っていたものだから彼女の白い手は真っ黒になっていた。とても綺麗な肌にやはり黒は映える。そこまで黒くないのに遠くからでも分かるくらい真っ黒に見える。あと少しの頑張りで取れるかもしれないと相原ゆかりと橋本真奈美は日頃鍛えられた腕力を駆使してペダルと自転車を引っ張っている。二人に比べたらとても貧弱な彼女、歯を食いしばり二人の力に押され負けたのだろう。スポンと取れた瞬間、身体ごとコンクリートの地面に投げ出されてしまった。
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