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でも、僕は無理矢理はあまり好きじゃない。もちろんこの行為は初めてではない。それなのにいつまでも慣れない彼女はこれが現実であると理解していないのか、何度性交しても純真な処女のように立ち振る舞う。
まあ、それはそれで毎日新鮮な気持ちで彼女を抱けるので僕としては嬉しいからいいが、その態度が余計にそそることを彼女は知らない。
今も過去も、彼女に僕への想いは一切聞かない。
何故なら彼女は…止めようこれ以上考えたら僕が死にたくなる。
「あの、」
「・・・・・・。」
「うっ、うぅ…ご、ごめんなさい…」
「…も、もういいよ…圭織ちゃん…僕が悪かった…」
でも、僕は彼女を誰よりも愛しているし、誰よりもそばにいたい。誰よりも長く一緒に、繋がっていたい。
そんなこと、彼女はきっと知らない。一生知ることもないのかもしれない。ただ、僕は気がおかしくなりそうな程愛おしい。愛おしくて頭がおかしくなりそうになる時だっていっぱいある。
鼻を啜り、僕から離れようとする彼女。お尻を必死に動かし、ベッドの隅に移動する。一方僕の下半身は萎え、先程まで高ぶっていた興奮も徐々に薄れて行く。
びっくりするぐらい今夜は性欲が湧かないため、彼女に謝られた僕はため息をついて下へ降りる。その時も古びた色の階段がギシギシと音を立て、虚無を作る。まるで別世界の二階、明るいシャンデリアのライトがリビングルームを灯している。
暑い部屋のエアコンはあまり効き目がない。今日も熱帯夜になるだろう、最近はとても暑く寝苦しい夜が続いている。
「圭織ちゃん…おやすみ…また…明日」
階段を降りたのはフェイントだった。
あの場所にいては彼女が精神的にかわいそうだ。それにしても生ぬるい下の部屋は居心地が悪い。
もし、ここで彼女の隣で寝てしまったら僕は仕事に行かず一日中彼女を犯すに違いない。
階段の頂上から僕は汗を拭い、窓から解放された様子の彼女を穴が空くほど見ている。おやすみと言っても彼女が寝ることは無い。非日常的な生活に居心地の悪さ、身体を蝕まれる苦しみから眠りなどという安らぎにはたどり着けないのであろう。
淋しさと悲しさを纏った美しい横顔が僕の物になる日は来るのだろうか。彼女の気持ちが全く見えてこないことに僕は焦りを感じている。
そして僕は彼女が落ち着くまでここにいる。
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